重ねられた生活 20170722~0728

0722(Sat)

休日。苫野先生の講演を聞きに玉川大学へ赴く。仕事以外で大学というものに足を運ぶのは、学生以来のことである。在学中の学生たちとすれ違いながら、『ストーナー』のことを考えていた。学びと人生が直結している場の空気は、やはり素晴らしい。
 
会ではこれまでの著作でのお話と、「次」のお話が少し聞けた。愛について。実に楽しみだ。僕としては「実存哲学がすべての基盤だ」という趣旨の言葉が聞けたのが大いに励みになった。教育哲学についても、実存的な部分が根底にあるものにこそ信が置けると僕は感じている。個人としてもっともっと勉強をしなければいけないと考えているからこそ足を運んだわけだけれど、自分のやろうとしていることはひとまず間違いではなさそうだと思えるほどには励まされて会場を後にすることとなった。帰り際、8号館から坂を下る折、正面からは夕方でも目を見開いている太陽が、傍らには学生たちの笑い声が。10年前を思い出していた。あのまま地元に居続けたらそもそも学びの場にアクセスすることがいったいどれほど可能だったのだろう。もちろんすべてが環境のせいではないにしても、僕のように怠惰な人間にとって機会の多寡はとても重要な要素だ。
 
移動がタイトだったので駅でパンを適当に口に突っ込む。以前だったら考えられないような行動だと思う。いろんなものとの付き合い方を少しずつ身に付けているのだ。この際、年齢のことは忘れよう。
 
そして夜。『映画 夜空は最高密度の青色だ』@シネマジャック&ベティにて。受付の女の子の声が実によい。映画そのものについてはまた後で書こうと思っている。見終えて外を歩きながら黄金町駅前の橋にさしかかった辺りで詩集を買おうと決め、そのまま横浜まで出る。
 
時間的にあおい書店しか選択肢がないなと向かう。夏の夜らしい人のにぎわいをかき分けたどり着いたらブックファーストになっていた。あっ…と身構えたものの品ぞろえは依然と遜色ないように思えた。『死んでしまう系の僕らに』と『夜空は最高密度の青色だ』を買った。他にも欲しいものが山ほどあったのだが、持っていたカバンも小さかったので、1時間ほど店をぶらついて退散。去り際にガラガラのレコファンを冷かして、部屋の狭さを思ってため息をついて後にする。この日のことは別エントリにもしている。思うところのある1日だった。
 

『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』
 
 

0723(Sun)

働いている最中も、アルコールを身体に入れても、詩がべったりと貼りついていた。心への浸透度(という表現では足りない何かがある)が高すぎて、結局『死んでしまう系のぼくらに』は「夢とうつつ」までしか読めていないのに。
 
言葉の先の風景、言葉の背後の想い、そういうものが実体がないのにそこにあるものとして立ち上がってきては僕に何事かを語りかけ、何事かを語らせようとしていた。
 
 

0724(Mon)

寝不足でふらふらしていた。勉強しなければならないが体がついてこない。仕事が邪魔だと感じるようになってきた。もちろん子どもやあるいは未来と接しているときはその限りではなく、まあそれは前からそうかという思い。バランスの問題だろうか。いずれにしてもここには「業務」ばかりが転がっていて、僕が考える(というよりはまだぼんやりと思う、くらいの感じだけど)学びや教育はないと断言できる。目の前の子どもたちの輝きにいろいろ引っ張られてまだここにいることはいるけれど、自分のような人間でも正しい努力をすればより多くの子どもたちに何かを手渡すことができるのであれば、なるべく早くここから出られるようにしなければならないのでは。以前の職場の子どもたちと一緒に撮ったアナログの写真を見ながら、これによって留まりながらも、これによって引導を渡すときがくるに違いない。そう感じている。
 
 

0725(Tue)

暑さでまいっていた。
 
 

0726(Wed)

雨でまいっていた。
 
 

0727(Thu)

仕事の合間に荷物の受け取りのために職場近くの郵便局へ滑り込む。 学生時代に住んでいた街の郵便局はとてもこぢんまりとしていたのだけれども、それに似たサイズ感だった。スナックのママみたいな風貌の人に対応してもらった。歩いたことのない道はいつだってどこだって刺激的だ。普段歩いている道ほどではないけれど。ね。
 
小谷美紗子 の『Out』を久しぶりに。「消えろ」で始まって「東京」で幕を閉じる構成は見事だ。トリオとしてのサウンドのタイトさと、作品としての引き締まった感じというのがとても心地よい。

愉しみはありますか 好きな人はいますか

(「東京」小谷美紗子

ほんとだよね。
 
 

0728(Fri)

早起きをする。ライフラインの料金を納める。雑にしまいこんでいた新しく買ったシャツたちをもう一度整理しなおす。その後昨日とは別の用事で近所の郵便局へ行く。どういうわけか、郵便局にはお年寄りのお客さんが多いと思う。これは訪れるのがいつも平日の昼間だからなのか、街のせいなのか、それともお年寄りには積極的に郵便局に立ち寄る理由があるのだろうか。
 
喫茶店によって、『死んでしまう系のぼくらに』をようやく少し読み進める。今まで言葉が与えられてこなかった心のあちこちが、一斉に芽吹いていく、そんな感覚になって、何度も何度も反芻してしまう。そして、なんだかくやしさすらある。ここに書いてある言葉たちのことがすごくわかる気がするし、同時にそれは思い込みだよという拒絶も感じる。そういう言葉を紡ぎたいと思っているからこそ。
 
帰りに書店に立ち寄る。ユリイカの最新号(cero特集号だ!)と最果タヒの特集号。『キェルケゴールの日記 哲学と信仰の間』鈴木 祐丞(講談社)、『饗宴』プラトン光文社古典新訳文庫)、『ヨーロッパ思想入門』岩田靖夫(岩波ジュニア新書)、『愛の縫い目はここ』最果タヒリトルモア)、それから論文のための本と、世界史のテキストを購入した。図書館で借りたのに手元においておきたくて買うようなことを最近は繰り返している。まあ何にしても、いっぱい読むぞの今週はここまでということで。

短歌の目・7月

◆暑いですね。夏ですもんね。それでは、よろしくおねがいします。
 

tankanome.hateblo.jp

   
1.透
 
手のひらを透かして見ればドロドロと齢30ぼくの血潮よ
 
 
2.ホイップ
 
ホイップはウィップクリームなんだよと得意気な顔おさらをとるね
 
  
3.果

頬を伝うそいつとともに食べなと「100エン」が言う青果店にて
 
 
4.ペンギン

鳴らしてよペンギンカフェ・オーケストラそれは大したことじゃないよと
 
 
5.短夜
 
短夜は寝息をたてりエフエムは挨拶ゆらぎ熱気の萌芽
 
 
テーマ詠「あつい」
 
パンたまごパンハムレタスパンたまご…持ちより笑う声は川面に