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2014年3月4日の日記

近代能楽集 (新潮文庫)

近代能楽集 (新潮文庫)

むつかしいことは分からない。抜き差しならなくなった人々の話が好きなのは、情念のみで生きるという、ある種の「執着」の到達点をそこに見るからなのだろうか。それがエンターテインメントとして僕の中で成立してしまうことと、心を捨ててしまおうと考えることとの関係を思う。それはきっと浅からぬことなのだろう。ここに収められた8編には、どこまでも適切な温度の言葉で(あえて使うが)「純度の高い」心が閉じ込められている。仮に執着の物語を追うことで空洞に何かを注ぎこもうとしているのならば、この作品を読むことをそのような行動に転化してしまう僕をいちばん哀しく思う。だがそれはそれとして、これらの物語が、書物で、舞台で、そして人々の営みの中で延々と繰り返されていくという事実は、とても美しいことだと思うので、そのことについては喜びを持って迎え入れたいと考えている。