2017年1月2日の断片日記

▼夜中の変な時間に目が覚めてしまい、このまま二度寝をしたら遅刻をするぞと聞こえてきたので映画を見て夜明けを待った。ライブラリ(とはいえもう箱の中につっこんであるだけのような状態ではあるが)から目をつむって2つ選んだら、『JUNO/ジュノ』と『ポンヌフの恋人』が出てきて笑った。前者にした。里親の2人のことばかり考えながら見た。


▼仕事帰りに遠回りをして帰ってくる。行きも遠回りをした。なんでそんなことをしているのか、いまいち理由は判然としないのだけれども、なぜだか身体がそういうふうに動いてしまう。フィジカル側からの要請なんて(頼んでもいない厄介事ならともかく)めったにないことなので、面白がってそのままにしている。意味を見出したい欲求にかられるが、野暮かなとも思う。どうなんだろうなと問うてみても明日も変な道歩きますよ、とだけ返ってくる。ふうんと思う。ふううん。
 
 
▼その帰り道に発見した学習塾の看板が場末のラブホみたいな光り方をしているのを見てうへえと声に出す。悪い顔で笑っていたように思う。妙に愉快な気分だった。住んで長くなるこの街とも、いい加減お別れしなくちゃいけないなと思い始めて…思い始めたのは実はかなり前だったりもするのだが、とにかくそういうものがずいぶんと高まってきている折のご挨拶に、どうしよっかなとか思ってしまう。


▼そして耳元ではaikoがJefferson Airplaneの次に歌いだして最高だなと感じる。『milk』を褒めたのはいつだったか…出会いのその時に、もう一つの可能性や終焉のにおいを横たわらせながら狂気と正気のはざまを行ったり来たりする様を描き出していて素晴らしいと思ったものだった。もう6年も経つんだね。

youtu.be

この間はすれ違ったんだ だけど声はかけられなかった 
曖昧なお辞儀は逆に嫌 この気持ち冷めてしまう前に
もっと心躍る世界が すぐ隣にあったとしても
乱れたあなたの髪に触れられるこの世界がいい


▼それで部屋に帰ってきて彼女の映像を見る。


  
この曲を初めて聞いたのはたぶんティーンの終わりとかその辺りだと思うけど、全然違う曲に聞こえる。これは、紛れもない尊厳の歌だ。ここしばらくどの曲を聴いてもあと1歩どこか届かない感じがしていたのだけれども、今の僕が言う尊厳に足を踏み入れていたのはこの曲だった。ああ、なんて偉大なポップソング。
 
 
▼で、なんかとてもよい気分になったので、リストアップしたものの今年はどうしようかなと思って作業を止めていたベストディスクをやはり自分のためにもやろうかななどと考えた。まあどうなるか分からないけど。16年に流行った曲とかも一応聞いといた方がいいのかなとか珍しく思って、ダンスが流行ったらしいあの曲を初めて聴いたらこれがとても良くできていてびっくりした。最後の3ラインで、すごい社会的な話なのではと思ってもう1回聞いたら「みにくいと 秘めた思いは」から「愛が生まれるのは 一人から」まででぶったまげた。これはすごいことですよと思った。時代への、状況への正しいリアクションとしてだけでなく、それを世代の接続点として機能するサウンドに乗せて巧妙に忍ばせてるだなんてポップミュージックかくあるべき…。少し前のフィリーソウルの流れとかランダムアクセスメモリーズなこととか、もっといえばスコット・ウォーカーとか、なんかそういうのが全部ばばっとつながった感じがしていたく感動してしまった。まあ好みかどうかで言うと別にそうじゃないんだけど、なんかそういう好き嫌いとは別の回路がまだ僕の中にあることがとても嬉しかった。ドラマを見ていたらこういう感動の仕方はしなかったかもしれないので、忙しさと自分の無関心さに感謝した次第。
 
 
▼というわけで外から見たら別に何が起きたわけではないんだけど、自分の中で色んな事が炸裂して気分の良い日だった。久しぶりだ。やっぱり同じ冗舌なら、上機嫌の方がいいよね。なんて。