2017年6月7日の断片日記

▼ふらふらと薬局に吸い込まれに行ったはずが、近くにあった雑貨屋で梅雨特集みたいなことをやっていてそちらに吸い込まれていく。女性モノの傘やレインコートを見ながら、実にいいなと思ったりこれは僕は持ち歩けないなと悲しくなったりしていた。全体的にはたいへんよい気分でそれを眺めていたのだけど、そろそろ行こうかなと思った頃になってようやくそれらのアイテムがかつて君に買ってあげたことのあるレイングッズブランドのものであることに気がついた。
 
 
▼当時何でそれを知ったのだったか詳しいことは覚えていないが、とにかくそこのプロダクトである傘たちに一目ぼれした僕はこれは絶対に君に持たせなければと思い、半ば強引に雨の日と紫外線対策用で2本傘を買ってあげたのだった。そもそも君は濡れてもお構いなしの人なのでまあまあの雨量でも傘を開かないうえに(対照的に僕は濡れるのが本当に大嫌いなので小雨でもすぐ傘を開く人間だ)、紫外線にもめっぽう強く(何にもしてないのに美白でもちもちなのだ!)、傘たちが活躍していたようにはあまり思えないのだけれども、それでもデザインは2人で選んで両人ともたいへんなお気に入りであったのだった。
 
 
▼そんなことをぼんやりと考えながら、ちょうど新調しようと思っていた頃だしと、ユニセックスな折りたたみ傘を1本購入した。仕事を終え、またしても終電に飛び乗ってからは本を読みながらもカバンにしまったその傘のことばかりを考えていた。部屋について炭酸水をぐびぐびと。いつまでこうして君に規定されていくのか、このまま亡霊を追うような日々を続けていたのではいけないのではないかという考えが頭をもたげる。それはあまりに悲しい話である。一方で君と知らないふりをし続けたあの日々における何重もの入れ子構造となってしまっていた難解な辛さと比べれば、現在のこの辛さなんて非常に明快で何とでもできるなと思ったのだった。そのあとは極めてご機嫌なのだけれども、その根底には君は結局「いてもいなくても」僕を悲しい気持ちにも楽しい気持ちにもさせるし、それはつまりあの日々と何も変わるところがないのだということ、そしてそもそもその両義性のようなものがまったく君だなと思えたということがあるのだった。