2017年7月7日の断片日記と解題

▼社会生活を円滑に送るための手続きにでかけたり、写真を撮られたりしていた。めためたに暑くて、道中滝のように汗をかいてしまう。みんなはそんなにうんざりしたように見えないのが不思議だった。
 
  
◆6月分の解題。なぜか今月は君や君とのことばかりになってしまった。お題からキーワードが出てきて、どうしてそれが出てきたんだろうと思いめぐらすと、その話にいきついたというケースが多かった。
    
1.クリーム
 
蜜月もはなればなれもこれ1本イランイランのハンドクリーム
 
 
・齢が30をこえて初めての冬、急に手が荒れるようになった。どうせ香りなんてすぐ消えるからと特に考えもせず気に入ったパッケージのものを使い始めた。初めて使っていたその日、一瞥をくれて「似合わないね」とだけ感想を漏らした君との最後の日々を終幕まで見つめ続けた観客のうちの1つだった。次の冬は別のものを使おうと決めている。
 
 
 
2.溝
 
3月の乗り換え駅は溝の口次は2人で来ようだなんて
 
 
・いつかの3月に君「たち」と出かけたとき、たまたま2人になったときがあって、なんとなくぼそっと言ってみた。君は予定通り無視をした。その後1年くらいは仕事で通りかかったり乗り換えで利用したりすることも何度かあって、ぼんやりと思い出すことが何度かあった。君も仕事に行くためにそこで乗り換えをすることがあったはずだが、2人が同時に乗り換えたのはあの日が最後だった。
 
 
 
3.万緑

「万緑」で画像検索後の世界ソシャゲまじりは環境破壊
 
 
ソーシャルゲームに使われている用語はどうやら多岐にわたるようで、たとえば神話関係なんかで画像検索するとそのゲームのキャラクターがヒットしまくるのでどうしようみたいな話を聞いたことがあって、そういうこともあるのかあと半ば感心?していた。今回たまたま「万緑」で検索したら同様の現象が一部で起きていた。検索結果にノイズが混じることはイメージ検索であれキーワード検索であれ避けて通れないことであって(実際には様々にすべがあって、必要であれば僕もそうしている)、なんとか了解しつつネットの海を漂うしかないのだが、「万緑」によって導かれる画像の性質のせいで、すわ環境破壊!と思ってしまったのでした。それ以上でもそれ以下でもないので、これは説明歌以外の何物でもない。
 
 
 
  
4.雨

「本当に雨が降るの?」と乗り出す身つなぎとめるはその不安だけ
 
 
・あの日窓の外を見ていた君があの場に残っていたのは、雨が降るか否かについて信じられるだけの何かが欲しかったから。傘を持つべきかどうか逡巡する君を横目に、僕はその「何か」を答えてしまったらきっとこの人は行ってしまうだろうと曖昧なことをムニャムニャと言っては遅延行為をはたらいていた。君はそんな僕の思惑を見透かしたかのように「濡れてもいっか、別に」とあっさりと荷物を減らすことを優先し、よどみなく出ていった。その2時間後、いまだ態度を決めかねている空を確認してから、大きい傘と折りたたみ傘を1本ずつ持ち、僕は出発した。
 
 
 
 
5.きみ
 
「ぼくのせい」「わたしがわるい」「いまなんて?」しおらしいかおきみのわるさよ
 
 
・がっつりダジャレを混ぜ込みたいという欲求もあるし、掛詞といふものについて上手に扱えるようになりたいなんて気持ちもある。本題。そんな顔をされたら許してしまうばかりか、そんな顔をさせてしまったと自分を責めだすことを分かってしおらしくしているのだろうか。だとしたらこの人は本当に悪い人だし、そうでなかったとしても珍しく素直な姿というものは、悪い予感を漂わせるには十分すぎるのであった。

 
 
 
テーマ詠「衣服」

横顔を見つめる僕の前顔を見つめるリブトップスのぬし・ねこ 


・ひな形はすぐにできたのだけれども、何度か手直しをした。「見つめる」を重ねているのは音のためというよりは君が話す時の独特のタイム感を忍ばせたかったからで、上の句から下の句にかけて微妙に音がガタガタしていく感じになっているのは、横顔を見つめているときの静寂と、その姿を見られていたことに気づくあのドキドキの対比。実際にはリブニットを着ていたのと、ブラウスの袖口にあしらわれていたネコと目があったのは別の日だったので、しっくりくる程度のガタガタを探すための作業がそこにはあって、それは随分と楽しいことだった。まあでも「前顔」が言いたかったのが1番、ではある。