サニーデイ・サービスがそばで鳴っていた僕の10年とすこし disc7

学生時代を過ごしたマンションの部屋で一番好きな場所が天井だった。僕はその部屋を出るころ天井を写真に収めてウェブにアップロードした。それが僕のTumblrの始まりで、僕のページはLOVE ALBUMと名づけられ、「僕らのパーティまであとほんの少し」とキャプションがついている。いまでは女の子と海と空と花ばかりが居並ぶ場所になっているけれど、それも含めて自分にまつわる話の中でも結構気にいっている話だ。
  

『LOVE ALBUM』(2000)

LOVE ALBUM

LOVE ALBUM

旅の終焉

▼解散前のラストアルバム。既にバンドは空中分解していて、打ち込みが多用され、ダンスアルバムの様相もある。


サニーデイ・サービス「魔法」
 
このアルバムについてはその後のストーリーがどうしてもついてきてしまうが故に正しく評価されないこともあるのではないかと思ってしまう。クレジットに各々の楽器も参加曲もなくなくただ「SOUND」として10名以上の名前が並べらていることの意味の重さよ。冒頭からあふれ出るダンスミュージックとしての高揚感と、ラストの「Wild Wild Party」でのらしからぬ大騒ぎは何かある種の断末魔のようで時に胸を締め付けてくる。
 

静かな季節 湿った草のおもかげにきみを想って立ち止まる
夏が連れて行ったぼくの恋人 香りだけ残して
 
「うぐいすないてる」

胸いっぱいの思い出を抱えたその両手に傷
こぼれる涙が物語のはじまり
夏には咲きほこり 冬には枯れてしまう恋
昨日と今日と明日を駆ける旅のできごと
 
「胸いっぱい」

これらをただの失恋の調べと聴くことはできないのだった。歴史としてこの後解散していることを僕らはもう知ってしまっているわけだから、そこに色がついてしまうのは避けられないのだ。ただ、それらをはがしたとき、ここには確かなグッドミュージックがある。シングルにもなった「夜のメロディ」はセクシーでロマンティックな解散前でも指折りの名曲だ。

ぼくの大切なものにきみはくちびるよせて
甘く溶け出す秘密盗んでゆくんだ
春の夜にぼくらからっぽになるまで
ひらひらと舞う花びらの中にいた
 
「夜のメロディ」

 

どこにもたどり着かないことが旅だから

▼ジャケットが好きだ。ここに僕は円環を見ていて、渋谷系の鬼っ子としての出自を持つ彼らが自分たちの音楽を見つけ、作り上げ、そのことによって変調をきたしながら最後はこうしてダンスミュージック然として還っていくさまが、本当に出来過ぎた話だと思ってしまう。文脈はまったく異なるにしても、Pavementのラストアルバムに抱いた感慨と似たような想いを抱いてしまう。
 

くり返す悲しい夜もきみが一緒にいてくれるなら
月日がたっても何も変わらずいられるはずさ
 
「パレード」

 
かつてタミー・テレルが「Ain't no Mountain High Enough」と歌いながらも命を落としてしまったことと同じなのだ。やはり、永遠はない。 それでも、どこへもたどり着かなかいとしても、この日々を生き/行かなければならない。「ぼくらのパーティまであとほんの少し」なのだから。やはり彼らが鳴らしていたメッセージは僕の思想と結びついている。このアルバムもよく聴いた。もちろん、今もだ。
 

MARVIN GAYE & TAMMI TERRELL "Ain't no Mountain High Enough"
 


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