2017年8月8日の解題

▼体調を崩しております。みなさまもお身体にはくれぐれも。以下、7月の改題でございます。
 
 
1.透
 
手のひらを透かして見ればドロドロと齢30ぼくの血潮よ
 
・下敷きにしたのはもちろんあの歌。生命賛歌なのだからそのテンションの高さは当然とはいえ、「手のひらを太陽に透かして見れば 真っ赤に流れる僕の血潮」の跳躍力は暴力的だと思う。さて、ドロドロとしているうちはまだましで、手のひらを太陽に透かして見ても向こう側が見えなくなってしまったらいよいよ棺桶に片足を…のサインです。生活を改めましょう。なぜなら、僕らはみんな生きているのだから。
 

  
2.ホイップ
 
ホイップはウィップクリームなんだよと得意気な顔おさらをとるね
 
  
・愛とは矛盾を容認することだから。 いつも僕は僕へそう語りかける。正確にはWhipped creamだねと出かかる声をよだれとともに飲み込んでは微笑み皿を取る男。彼が買ってきたシュークリームは彼女にとって日常で、彼女との日常は彼にとっていつだって、なんだって、そうそのすべてが、非日常。
 
 
 
3.果
 
頬を伝うそいつとともに食べなと「100エン」が言う青果店にて
 
 
・青果店のあの「100エン」の値段表記というのは、いわゆるポップとも違う異常な怪力を秘めていると感じることがある。こちらの気持ちなんてお構いなしの力強さ。それが心地よく思えるうちは、いや、思える時にしか、商店街へは行かないのだ。
 
 
 
4.ペンギン
 
鳴らしてよペンギンカフェ・オーケストラそれは大したことじゃないよと
 
 
・「The sound of someone you love who's going away and it doesn't matter」が聞こえてきてしまったら僕らになすすべはないのである。
 
 
 
5.短夜
 
短夜は寝息をたてりエフエムは挨拶ゆらぎ熱気の萌芽
 
 
・これはここに着地するまでいろいろあった歌である。要は、短夜が眠りにつくころというのは朝の始まりであり、その狭間の頃のラジオにおける挨拶の混線が僕は好きなのである。そして、短夜が本当に短いときはその挨拶のころには早くも蝉がうっすら鳴いていたりして、ああこうして今日も夏をやるのだなと感じるのだ。
 
 
 
テーマ詠「あつい」
 
パンたまごパンハムレタスパンたまご…持ちより笑う声は川面に
 
 
・最近とみにピクニックへの欲求が高まっており、だが誘う相手がいないのだった。遊びに行こう、は言えてもピクニックに行こうは…!まあ夏の暑さを言い訳にして、計画は適当に先延ばし。それで、「あつい」と聞いたときに最初に思ったのが「幽遊白書」の「あ、ついでに…」だったのだけれども、それを詠うのは無理があった。それで、その次に頭をよぎったのがぶあついのから細かいのまで大小さまざまなサンドイッチのことだったのでこれにした。水面に、の方が滑らかだったけど、そこが川であることが重要だったのでくどいほど強調することにした。それにしても、行きたいなあ、ピクニック。