2016年4月17日の日記
▼こうして場所を分けたのだ。瞬間についての成果を述べなければならない。
- 作者: ヘルマン・ヘッセ,実吉捷郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1959/04/05
- メディア: 文庫
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ぼくはながいあいだ、かれを見守らずにはいられなかった。そしてその当時、まだ決して意識的にではなかったが、何か非常に特異なものを感じた。ぼくはデミアンの顔を見た。そしてかれが少年の顔ではなく、成人の顔を持っているのを、見たばかりではなかった。それ以上のことを見た。それもたんに成人の顔というだけでなく、何かもっと別のものだということを、見たような、または感じたような気がしたのである。なんだかそこには、女の顔めいたものもあるように思った。そしてとくにこの顔は、一瞬のあいだ、男性的でも子供らしくもなく、ふけてもいず、若くもなく、何か千年もたっているような、何か時間を超越しているような、われわれの生きているのとはちがった時代の極印がついているようなふうに見えた。獣か樹木か星なら、こんなふうに見えるかもしれなかった。―いまぼくが大人になって言っていることを、ぼくは知らなかったし、そのとおりのことを感じたわけではない。しかしそれに似たような感じを持ったのである。おそらくかれは美しかったのだろう。おそらくぼくは気に入ったのだろう。あるいはまた、ぼくに反感をいだかせたのかもしれない。それもやはり、どっちともわからなかったのである。ぼくはただ次のことを見ただけだ―かれはぼくらとはちがっている。獣のようでもあり、または精霊のようでもあり、または映像のようでもある。どんなふうなのか、ぼくにはわからないが、しかしかれは、ぼくらとはちがっている。とうてい考えられないほどちがっているのだ。
記憶は、これ以上のことを告げてはくれない。そしておそらくいま書いたことも、後年の印象にもとづいているかもしれないのである。(p.88-89)
この美しい報告は、僕の考える瞬間の印象に似ている。まったく、会ったことも見たこともないものの「印象」を語るのもおかしな話だが。
▼ひどい風雨だった。気分に身体、やること、歩く道、服装。極端な天候の前には色んなものが強制下にあって不快だ。だがそもそも1日のほとんどは仕事で暮れていく。